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【書籍紹介】仇敵

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    仇敵【電子書籍】[ 池井戸潤 ]
    価格:637円 (2017/4/27時点)

    社会現象にもなったTVドラマ「半沢直樹」の原作者、池井戸潤。彼の作品に共通するものは「逆転のカタルシス」である。主人公を抑圧する状況を打破し、最後の大逆転にて爽快感を味わえる、そんな「水戸黄門」的な展開を得意としている。これまで多くの池井戸作品を読んできたが、すべての作品で読後に「面白かった」と感じることができる。それは、現代を象徴しているかもしれない。世の中は「ヒーロー」を求めているのである。それも、スーパーマンのような超人的なヒーローではなく、池井戸作品の主人公のような、「自分と同じ一人の人間」的なヒーローを。

    あらすじ

    本作品の主人公である「恋窪商太郎」は、元は大手銀行のエリート営業マンであった。銀行内部の不正を暴くため奔走し、あと一歩のところまで追いつめたが失敗に終わってしまう。ポジションを追われた恋窪は大手銀行を退職し、地方銀行の庶務行員(雑務係)として第2の人生をスタートさせたところから物語は始まる。

    庶務行員としてゆっくりとした仕事をしている恋窪は、ひょんなことから若手営業マンへのアドバイスを送るようになる。そんな、責任が重くない状態で悠々自適に生活をしている恋窪の前に、何の因果か元の職場で不正を暴く一歩手前まで追いつめた相手が立ちはだかる。恋窪を取り巻く環境が風雲急を告げる中、仇敵へのリベンジを決意する。

    レビュー

    本作品は仇敵との対戦を軸に8話の短編集となっている。それぞれの短編は独立した構成となっており、1話ごとに完結していく。恋窪の現職での雰囲気と元の職場での雰囲気の違いが、過去の恋窪のエリート感を高め「彼なら解決してくれる」という感覚を大いに抱かせる。話が進むにつれて昔の研ぎ澄まされた感覚を取り戻し、困難な状況を解決していく様は痛快である。

    ミステリーやサスペンス作品の多くは、犯人や黒幕を終盤に暴き解決するストーリー構成を持っていることが多い。敵を暴いていく過程がストーリーの肝となっていることが多いが、池井戸作品は違う。敵は物語の序盤でわかりきっているのである。その敵に対して主人公がどのように反撃をするのかがストーリーの軸となっているため、読者からすると「やきもき感」を味わうことになる。

    そして、この「やきもき感」が最後の逆転を大きく際立てる。犯人が分かっているのに、相手を追い詰めることができない中でもがき続ける姿が、読者の没入感を高めていると感じる。当作品も、その池井戸流ストーリー構成が如何なく発揮されており、続きが気になってしょうがない。

    ただ、池井戸作品にしてはエンディングがあっさりしすぎているという感じを受けたのは事実だ。短編集であるので、一話ずつ読みやすい内容になっているが、大筋の仇敵との対戦は想像以上に簡潔であった。いよいよ物語もクライマックスで、仇敵をどのように追い詰めるのか高揚しているところに、肩すかしをくらったような印象がある。

    とはいえ、やはり池井戸作品の魅力が詰まった良作であることは疑いの余地はない。当記事執筆時はTBSの日曜劇場にて「小さな巨人」というドラマが放映されているが、この「小さな巨人」を楽しめる視聴者はぜひ読んでもらいたい。ボリュームも多すぎず、短編集ということで非常に読みやすい内容になっているので、入門編にはもってこいだと感じる。

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